映像信号に含まれる信号は、どれだけの周波数帯域を持ちうるかを実際に考えてみよう。
まず、テレビの画面に映される画像の画素数を考えてみる。
NTSCでの走査線数は525本なので、縦方向の解像度は525ピクセルと考えられる。
縦方向も同じ解像度を持つとすれば、画素数は
525^2 = 275625 ピクセル
となる。
ただしこれはアスペクト比が1:1の場合で、実際に使われているアスペクト比(4:3)を適応すると、
275625 * (4/3) = 367500 ピクセル
の画素を持つ。
いちばん高い周波数が出るのは、隣り合った画素それぞれに白と黒が映っている縞模様の場合で、
その場合は最高周波数は画素数の1/2になる。全部の画素を1秒で走査するとすれば、その最高周波数は
367500 / 2 = 183750 ≒ 183 kHz
となるが、テレビでは画像が1秒間に30コマ送られてくるため、さらに30を掛けて
183750 * 30 = 5512500 ≒ 5.5 MHz
が得られる。しかし、水平走査が終わった後の帰線時間などを勘定に入れると、
映像信号のうち実際に画像の情報が入っているのは 78% くらいなので、これを掛けると
5512500 * 0.78 = 4299750 ≒ 4.3 MHz
となるので、映像信号は最高で
4.3MHzの周波数を含む事になる。
つまり、映像信号を増幅する際は、60Hzから約4MHzまで一様な増幅率をもつ広帯域増幅器を使わないと映像の質が劣化することになる。
さらに映像信号には直流成分も含まれるため、増幅器の結合にカップリングコンデンサを使うと直流分が失われ、
映像信号全体の電圧が信号の平均値によって変化するため、映像の平均の明るさによって全体の明るさが変化してしまう。
具体的にいうと、暗い部分が多い画像は全体的に明るくなり、明るい部分が多い画像は全体的に暗くなる。
このような事態を防ぐには、上の図のように、カップリングコンデンサの後に
直流再生回路を設けて、直流分をもとに戻すことで改善される。
直流再生回路はカップリングコンデンサの後にダイオード(または二極管)を繋げることで実現できる。
出力が負電圧のときはダイオードが導通してコンデンサが充電されるので、全体の電圧が信号の平均値で変化しなくなる。