直熱管は陰極にフィラメントを使い直接加熱するもので、主に電池管や高圧整流管、送信管などに用いられる。
フィラメント材料には主に酸化物陰極を塗布したニッケルリボンが用いられるが、
送信管や高圧整流管などにはタングステンやトリウムタングステンが使われる。
熱容量が小さいので立ち上がり時間が比較的短い。フィラメントの加熱に交流を用いるとハムノイズが加わるので、
小さい信号を扱う回路に使うとき、フィラメントの加熱には電池などの直流電源を使わないといけない。
また、フリッカ雑音はタングステン陰極、トリウムタングステン陰極、酸化物陰極の順に大きい。
つまり、タングステン陰極の真空管はノイズが大きい。
傍熱管は陰極とそれを加熱するヒーターが別になっているもので、陰極の加熱に交流を用いることができる。
陰極には酸化物陰極が塗布されたニッケル細管が使われる。
ニッケル細管を作るには、炭素鋼の棒を硫酸ニッケル水溶液に入れて陰極とし、厚いニッケルメッキを施した後引き抜き、必要の寸法まで引きしぼる。
マグネシウムなどの還元剤を添加すると電子放射が良好となるので、マグネシウムを真空蒸着したのち水素中で加熱して内部に拡散させる。
硫酸ニッケルは陽極にニッケル、陰極に炭素電極を使い、硫酸を電気分解すると作れる。
ヒーターにはタングステンやニッケルが用いられ、酸化アルミニウムが絶縁体としてコーティングされている。
http://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1967/07/1967_0...
酸化物陰極はバリウムとストロンチウムの酸化物で、カルシウムの酸化物が添加されることがある。
使用温度は1050~1150Kで、電子放射効率は50~250mA/W、電子放出密度は250mA/cm
2ほどである。
酸化物陰極を作るには、まずバリウムとストロンチウムの炭酸塩を、混合比が重量比で4:3から1:1くらいに
なるように混合してそれにメタノールを加え、瑪瑙の乳鉢もしくはボールミルで十数時間粉砕して微粉末にする。
またはバリウムとストロンチウムの硝酸塩をそれぞれ再結晶させて不純物を除去したものを同じく重量比で4:3から1:1くらいに混合し、
それを蒸留水に溶かし、さらに炭酸ソーダか炭酸アンモニウム水溶液を徐々に滴下して炭酸塩の沈殿を得て、蒸留水で十分洗浄した後
50℃以下でよく乾燥させてボールミルで1日ほど粉砕して微粉末を得る。
接着剤にはニトロセルロースを酢酸アミルに溶かしたものが用いられるが、
電着法を用いる場合は酢酸アミルの代わりにエタノールとジエチルエーテルの混合液を用いる。
この時の組成は Ba・Sr(CO
3)
2 1.8g、ニトロセルロース0.48g、エタノール20cc、ジエチルエーテル40ccで、
まずニトロセルロースをエタノールとジエチルエーテル混合液に溶かし、最後にBa・Sr(CO
3)
2を添加する。
電着電圧は100~200V、時間は5~15秒ほどである。
塗布厚は陰極面積の1cm
2あたり5mgくらいである。
活性化をするときは定格の1.8~2倍のヒータ・フィラメント電圧で加熱し、1010℃ほどまで温度を上げて炭酸塩を分解し酸化物となす。
この時定格より少し高いプレート電圧をかけておき、プレート電流が流れてきたら電圧を定格以下まで下げ、安定するまで置く。
この活性化は30分ほど行われる。