IPUT電子工学研究会による様々な研究結果をおいておくところ



パラメトロンの仕組み

係数励振と位相の記憶作用

多数決論理と結合回路

三拍励振法

パラメトロンの実験

L可変型パラメトロン

フェライトコアの飽和によるμの変動を利用した方法
フェライトは磁束密度が一定以上の領域でμが下がる

C可変型パラメトロン

ダイオードに逆バイアスをかけると空乏層の厚さが変動するが、
これはコンデンサの容量が変化したことと同じになる

レポート


パラメトロンとは、1954年に東京大学大学院の高橋研究室に所属していた後藤英一によって発明された電気素子である。
パラメトロンは非線形リアクタによるパラメータ励振現象を応用した素子で、ものすごく簡単に言うと「電気のブランコ」である。
ブランコをこぐことができるその原理もパラメータ励振現象で、固有振動数を持つ共振系において、固有振動数を決める係数を、その固有振動数の2倍の振動数で変動させると、共振系がその固有振動数で振動するという現象である。

具体的に例を挙げてみる。さて、振り子は紐の長さによって周期が変わる。そこで、振り子の紐を滑車に取り付け、紐を引っ張ることで周期を変えることができるようにしてみる。そして、振り子の周期が2秒になるように紐の長さを調整し、紐を1秒周期で引っ張り緩めるということをすると、振り子に直接振動を与えていないにも関わらず、振り子は約2秒周期で揺れはじめる。これがパラメータ励振現象である。

小学校の理科の授業で、コイルとコンデンサを扱ったことがあると思う。コンデンサは電気を貯める素子として登場し、コイルは電磁石として登場したが、コイルも電気を貯めることができる。コイルとコンデンサを並列に接続した回路を作り、電気パルスを与えると、その回路にはコンデンサとコイルの容量によって定まる固有振動数の電気的な振動が現れる。この回路を共振回路といい、その周期はT=2π√(LC)で求められる。この式のLはコイルのインダクタンス(ヘンリー[H})で、Cはコンデンサのキャパシタンス(ファラド[F])である。

後藤英一はこの共振回路のLを変化させてパラメータ励振を起こすことを考えた。コイルのインダクタンスはコイルの巻芯の素材の透磁率によって変わるが、その透磁率はコイルに流れる電流の大きさによって変わる。つまり鉄心を入れたコイルにバイアス電流と高周波電流を重複して流し、そのコイルに一緒にもうひとつコイルを巻いて、それを高周波電流の2倍の周期で振動する共振回路のコイルに用いると、パラメータ励振が起こる。

このようなパラメータ励振を起こす素子をパラメトロンという。パラメトロンを励振して得られた信号は、励振に使う高周波電流と同期しているが、得られる信号の位相は二通り存在する。ひとつを 0 radとすれば、もう一方は π radとなる。パラメトロン同士を接続し、順番に励振していけば、その位相信号は少しもブレずに伝達されていく。ひとつのパラメトロンに入力を複数設けると、位相が逆の信号は相殺され、位相が同じ信号は増幅される。入力を奇数個設けると、多数決論理回路が実現できる。また、接続するときに巻線の向きを逆にすれば位相は逆転する。この仕組みを応用すると、様々な論理回路を作ることができる。

パラメトロンはトランジスタが発達するまでコンピュータの素子として用いられたが、日本でしか用いられなかった。
パラメトロンは動作原理からクロック周波数を上げることができず、せいぜい20kHzくらいが限界だった。現代のコンピュータと比較すると、だいたい150000倍ほどの差がある。パラメトロンの取り柄は安価で安定していることくらいで、トランジスタが高価で不安定だった時代では十分価値があったものの、1960年代の中期までにはその立場が逆転し、淘汰されてしまった。

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