IPUT電子工学研究会による様々な研究結果をおいておくところ

時計の構成要素

動力


動力にはぜんまいばねやおもりなどが利用されていて、弾性エネルギーや位置エネルギーを蓄え、回転運動に変換する。

動力としておもりを使う場合、バレルと呼ばれる筒の端に紐を固定して巻きつけ、紐のもう一端におもりを取り付けて使うような形になる。
しかしこのままではおもりが一番下まで行ったあと、巻き上げることができない。巻き上げる時は軸の回転方向が逆なのを利用し、
ラチェット機構により巻き上げる時の回転が時計の機構に伝わらないようにして、おもりだけが巻き上がるようにすれば良い。
ただし、巻き上げている間は時計は止まったままになる。巻き上げている間に時計が止まらないようにするのが動力維持機構で、
巻き上げている間でも常に時計に動力を供給し続けることができる。
クリスティアーン・ホイヘンスが発明したものがおそらく最初で、他にもバネを使ったハリソン型などがある。

ホイヘンスの動力維持機構はおもりを紐に固定せず滑車を使い、またおもりを軽いものと重いものの二つを用意し、
紐を環状にして巻き上げプーリーと出力プーリーにかけて、巻き上げ機構と時計の機構が分離するようにしている。

脱進器


振り子やテンプなど、等時性を持つものを用いて一定の速度を保つ機構である。
脱進器それ自体はあくまでも時間の基準をうるための機構であり、動力源ではない。
稀に振り子時計の動作原理の説明で振り子が動力として働いているように説明されるが、誤りである。進化論を目的論的に解釈するのと同じくらい誤りである。

脱進器は動力からのトルクの変動やその他の要因に対してその周期が変動しないものが理想的であるが、実際にはいろいろなことで周期が変動する。
例えば振り子は棒の長さによってその周期が定まるが、周囲の温度変化によって棒が熱によって伸縮すると周期が変わる。
定荷重でないぜんまいばねは、巻けば巻くほどトルクが強くなり、解けていけばトルクが弱くなっていく。このトルクの変動で脱進器の周期が変わることがある。
このようなことを避けるため、レモトワール(remontoire)という機構がある。これは小さな動力源で、主動力源を使って定期的に巻き上げることでトルクの変動を最小限にとどめるものである。
ホイヘンスの機構を応用したロビン型や、おもりと遊星歯車を用いたワグナー型など様々なものがある。

脱進器は振り子などの周期によってガンギ車を止めたり進めたりするものだが、それだけではなく振り子などに動力を供給する仕組みでなければならない。
多くの脱進器は、ガンギ車と呼ばれる歯車が使われていて、アンクルやヴァージなどと呼ばれる部品がそれの歯に噛み合い、ガンギ車を停止・運行させるのを繰り返しながら、
ガンギ車から力を受け取り、テンプや振り子が振動を持続するようになっている。
ヴァージ脱進器

Verge escapement は Crown wheel escapement ともいい、王冠状のガンギ車と、ヴァージという部品からなっている。
ヴァージは棒テンプにつながった軸にパレットと呼ばれる板がついた構造をしていて、このパレットがガンギ車と噛み合うことで働く。
棒テンプは両端に重りがついた棒で、その重心には軸があって、ヴァージがつながっている。棒テンプは重りの慣性を利用して周期を刻むので、
ガンギ車に伝えるトルクが変化するとその周期が変わってしまい、精度が悪い。
また、慣性によってガンギ車に力を逆流させるので負担が大きい。この逆流は退却(Recoil)という。
アンクル脱進器

Anchor escapement は平歯車やラチェットギヤに似た形のガンギ車と、アンクルという部品からなっている。
周期を刻む要素に振り子を使うようになっている。ヴァージ脱進器と同じように退却があるほか、
ガンギ車に伝えるトルクが変化するとその周期が変わってしまうところも共通している。
デッドビート脱進器

アンクル脱進器のアンクルの形状を改良したもので、アンクルがガンギ車の動きを止めるようになっている。
従来の脱進器と違い退却がなく、トルクの変化による周期の変化が少なく、精度が高くなった。
ピンホイール脱進器

デッドビート脱進器のガンギ車を、歯がピンになっている王冠状のものにした脱進器。
シリンダー脱進器

周期を刻む要素にテンプを用いたもので、アンクルはなくテンプに直接ガンギ車が噛み合うようになっている。
加工が難しく、磨耗が激しい。
レバー脱進器

デッドビート脱進器をさらに改良したもので、テンプと分離したアンクルを持っている。
精度が良く、今日でも腕時計によく用いられている。

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