IPUT電子工学研究会による様々な研究結果をおいておくところ

真空管製造と誘導加熱


真空管の製造の際、真空管の電極の温度を上げて残留ガスを排出させないと短命の真空管しか作れません。
しかし電極などは管球の中にあるので、外部から直接加熱することはできません。
そのため、電極の加熱は主に電子衝撃や誘導加熱、またはそれを併用することで行います。

電子衝撃は、プレートやグリッドなどの電極に高電圧を印加して、フィラメント加熱電力も定格より多めにすることで電極に多量の熱電子を衝突させ加熱するもので、
電源さえあれば簡単に行える反面、真空管に大きな負荷を与えるためにフィラメントや電極を損傷しやすい欠点があって、真空管の構造によっては加熱しきれないことがあリます。

誘導加熱は、高周波電流を流したコイルを真空管にかぶせたり近づけたりして電極に渦電流を生じさせ、その時のジュール熱で電極を加熱するもので、
装置が複雑になりますが、適応できる範囲が広くて扱いやすく、真空管を損傷しにくいものです。

初期の真空管製造では主に電子衝撃が使われていて、じきに火花放電式の誘導加熱装置が使われ始め、
大電力が扱える送信管が普及すると真空管式の誘導加熱装置が使われるようになりました。
また、ゲッターを加熱する手段にも誘導加熱が必要になります。

というわけで


誘導加熱をするためには大電力の高周波発振器が必要です。
最初は昔のように送信管でやっていましたが、調整が大変だしパワーが出ないし暑いしブレーカーが落ちるわでエライ目にあったので、
半導体式に転換しました。

基本的には、LC共振回路となっている加熱コイルと、それに電力を供給するインバータ回路を作ればいいのですが、
それだけでは調整が面倒で、また絶縁されていないので商用電源に直結してパワみを増すには危険です。
そこで、まずはトランスを使って一次側にスイッチング回路を接続し、二次側はワークコイルの共振回路に直列に給電するようにします。



さらに、PLL回路を使って二次側が常に共振し続けるように周波数を自動調整するようにします。これには共振回路の特性を利用します。
上の図のような回路では、二次側が共振している時、トランスの一次側の電圧位相に対してコンデンサの電圧位相は90°進むようになります。
そしてそれより周波数が高いと位相が進み同位相となり、低いと遅れて逆位相になります。
なので、インバータの励振にVCOを使い、トランスとコンデンサのそれぞれの電圧を位相検波回路にかけて位相差を取り出し、
それをコンパレータにかけた後VCOにフィードバックすれば常に二次側を共振させることができます。
さらにコンパレータの基準電圧を変えれば位相差が変わり、容易に出力を可変させることさえできます。



この回路はPLL式誘導加熱の例です。
4046を使えば楽なのでしょうが、発振周波数の計算がよくわからなかったので、
コンパレータとクリッパにNJM2403、VCOに7555、位相比較と分周に4013を使っています。
ゲートドライバにはIR4427を、インバータのスイッチング素子にはIRFP260を使いました。
VCOの出力を分周するのは、デューティ比を50%にするためです。

ゲッター用誘導加熱装置


ゲッターにはチタンを使いますが、チタンは抵抗が高いので前述の装置ではうまく加熱できませんでした。
さらにゲッターの加熱方向は管軸と平行ではなく垂直だったりするので、ソレノイドコイル型の加熱コイルでは加熱できません。

なので加熱コイルをパンケーキ型にして、さらに周波数を高くして小さなゲッターを加熱できるようにします。

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