IPUT電子工学研究会による様々な研究結果をおいておくところ

ブラウン管の基礎

ブラウン管とは


ブラウン管というものは、高電圧で加速された細い電子ビームを蛍光物質が塗布されたスクリーンに当てて蛍光を出させる特殊な真空管の一種。
電子ビームは比較的簡単かつ高速に方向を変える(偏向)ことができるので、それを応用してテレビやオシロスコープなどに使われている。

ブラウン管の原型は1897年にカール・フェルディナント・ブラウンが作った陰極線管である。当時のブラウン管はガス入り冷陰極型で、
ガスの電離により生じた陽イオンの衝撃で陰極から電子を放出させていたため動作があまり安定していなかったが、のちに改良が加えられて高真空熱陰極型のブラウン管が作られ、広く応用されるに至った。
ここでは高真空熱陰極型のブラウン管について解説する。

ブラウン管の構造


ブラウン管の構造は電子銃偏向系蛍光面の3つの要素に分けられる。電子銃ではカソードから放出された電子を高電圧で加速・収束させて細い電子ビームが作り出され、
偏向系で偏向されたのち蛍光面に衝突し、蛍光によって小さな明るい点「輝点(スポット)」を生じさせる。
電子銃

電子銃は細い電子ビームを作り出すための電極群である。電子ビームの収束方法などにより構造にいくつか種類がある。

電子ビームの収束には電子レンズを形成する必要があるが、それには電磁収束と静電収束の二種類がある。
電磁収束は電子銃の位置に数千回巻きのフォーカスコイルを外から取り付け、それに直流電流を流して作り出した磁界で電子レンズを作るもので、
静電収束は電子銃にフォーカス電極を入れて直流電圧をかけ、それで作り出した電界で電子レンズを作るものである。

電磁収束は1950年代後半までのテレビ用ブラウン管で多用されていたが、フォーカスコイルはコストが高く故障の原因となるため、次第に静電収束型になった。
オシロスコープ用のブラウン管は基本的に全て静電収束型である。

イオン焼けとイオントラップ

ブラウン管は高真空になっているが、管内部および電極の表面積が大きい他、蛍光面は微量にガスを出す。このガスはカソード付近で電子によって電離され、
それで生じた負イオンは電子ビームと同じように蛍光面へ加速される。イオンは電子の2000倍以上の質量を持ち、電子と比べて磁界でほとんど偏向されないため、
中央だけ蛍光面が劣化してしまう。この現象をイオン焼けといい、これを回避するための機構をイオントラップという。
これはイオンが磁界でほとんど偏向されないことを逆利用し、電子銃そのものを3°くらい曲げるなどしておき、30~50ガウスの磁石をカソード付近に取付けることで、
電子だけが蛍光面に届くようにしてある。 

イオン焼けは電磁偏向に特有の問題なので、静電偏向ブラウン管にはイオントラップはない。また、後述するメタルバック技術により、現在ではイオントラップは不要となった。
偏向系

偏向系は通常水平方向と垂直方向とに2対ある。極座標用(PPIスキャン)などでは3つあるが、ここでは述べない。
偏向方法には電磁偏向と静電偏向の二種類がある。

電磁偏向はブラウン管の外に取り付けた偏向コイルによって磁界を作り、それによって電子ビームを曲げるもので、
静電偏向はブラウン管の中に取り付けた偏向電極によって電界を作り、それで電子ビームを曲げている。

電磁偏向は偏向に電力が必要であるが、陽極電圧に比例して偏向量が大きくなるほか、
電子銃の口径を大きくして蛍光を明るくできるため、テレビに利用される。
ただし、周波数が上がるにつれてコイルのインピーダンスが上がるので、広帯域の偏向は困難。

静電偏向は偏向に比較的大きな電圧振幅の信号が必要であるが、高い周波数でも良好に偏向できるためオシロスコープなどの測定器に使われる。
ただし、輝点を単位長移動するために必要な電圧は陽極電圧に比例するため、蛍光の明るさを増大するため、陽極電圧を高くすると偏向により大きな信号が必要となる。
蛍光面と型番

蛍光面は電子が衝突すると特定の波長の光を発し、スクリーンの役割をする。

蛍光面に使われる蛍光物質は用途により異なるが、マンガンを添加したケイ酸亜鉛やタングステン酸カルシウム、硫化亜鉛などが使われる。

ブラウン管の型番と蛍光色

ブラウン管の型番は3KP1とか5UP1、7JP4や21AXP22など、様々なものがある。これの読み方について解説する。

まず最初の1~2桁の数字は画面サイズを表している。画面が丸型ならその直径、角形ならその対角線の長さを表す。
アメリカで設計されたものならこの数字の単位はインチで、日本で設計されたものだとミリメートルである。めんどくせえなあ。

型番の最後のPから始まる数字はスクリーンの蛍光色や特性を表している。例えば、P1は緑、P4は白、P11は青である。
日本で設計されたブラウン管は蛍光体を表す文字としてPの代わりにBが使ってある。 (75AKB1)など。
以下に代表的な蛍光体の残光時間と色、用途を書いておく。一般的にP1やP31以外の蛍光体が使われた静電偏向ブラウン管は希少である。

P125ms 緑 オシロ用
P422us,60ms 白、黄色残光 テレビ用
P7400ms 青白、黄緑残光 レーダー、心電図、SSTV用
P1130~100us 青 フィルム記録用
P22RGB カラーテレビ用
P31緑, 90us オシロ用

残りの1~2文字のアルファベットは設計によって変わる。

まだ書くべきことはいろいろあるけどとりあえずここまで

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Menu

メニュー

メンバーのみ編集できます